2024年11月21日

世界に誇れる日本の新幹線のすごさとよわさ⑥ ~トンネルドンとの戦いだ!~

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新幹線の「狭さ」について解説。トンネルの断面積が狭いため、空気抵抗や衝撃波が生じる。すれ違い時の距離も国際基準より狭く、衝撃や揺れが増す。これらの課題を克服するために特有のデザインが採用された。新幹線の進化は続く。

特急すずらん

前回は“分岐(ポイント)”についてお話しました。今回は予告のとおり“狭さ”についてお話してきます。

“狭さ”といっても、新幹線の車両のサイズのお話ではありません。実際に新幹線に乗るとわかりますが、2列と3列の計5列あります。JR東日本の東北新幹線や上越新幹線では3列+3列の6列というものもありました。一般的な在来線の特急は2列+2列の4列が一般的ですね。やはり新幹線の車両は広いということです。今回の“狭い”というのは、“トンネル”や“すれ違い”の狭さです。
日本の新幹線のトンネル断面積は約65㎡が基本です。車体の大きな新幹線も充分に通ることのできる大きさなのですが、海外の高速鉄道のスタンダードは100㎡以上なんです。なぜ、トンネルの断面積が大きな方がいいかと言うと、小さければ小さいほど列車がトンネルに入った時の空気抵抗が大きくなり、列車への衝撃や揺れが大きくなってしまうからです。また高速で進入した車両によってトンネル内の空気が反対側に押し出されて、反対側にある出口では“トンネルドン”と呼ばれる衝撃波が発生して、砲撃のような音が出ることもあります。すれ違いの距離も、“狭い”と言わざるをえません。すれ違い同士の線路の中心から線路の中心の距離は、日本の新幹線は標準では約4.3mですが、海外の高速鉄道では軽く5m以上あります。フランスの高速鉄道TGVでは10mという区間もあります。出来るだけ用地買収を減らし、建設費を抑えたい日本にとっては、苦肉の策であったのでしょうが、これが高速度でのすれ違い時の衝撃や揺れの問題を生んでしまいました。
それぞれの問題をどのように克服してきたのでしょうか。初代0系新幹線は、丸い鼻を持ったような顔をしていました。現在の東海道新幹線の主力車両“N700系”は、白地にブルーのライン以外は0系の面影はありませんね。それもそのはず、“遺伝的アルゴリズム”を取り入れてデザインされたからなんです。といっても文系のわたしにとっては、遺伝的アルゴなんたらというものは咀嚼できませんでしたが… とにかくそれを取り入れ、さらに、トンネル進入の際の断面積の変化率を一定にさせるという設計で、あの顔が完成しました。トンネルの問題をあまり考えなくてもいい海外の高速鉄道の顔と異なった日本独自のデザインになったのは、そのような理由からなんですね。またすれ違いの衝撃や揺れを減らすのに効果を発揮したことは言うまでもありません。

いかがでしたでしょうか? 日本の新幹線はすごいんですが、その弱みもまた色々とあるんです。それをさまざまな技術や対策で乗り越えてきました。新幹線の進化はどんどん続きます。これからも新幹線の進化からは目が離せませんね。

では、また!

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