世界に誇れる日本の新幹線のすごさとよわさ③ ~夢の時速320㎞運転への軌跡~

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高速鉄道

高速鉄道

前2回で、新幹線のすごさをお話してきました。本当はもっともっとあるのですが、ひとまずは大きく、そしてみなんさんみもわかりやすい“全国の路線網”と“運行ダイヤ”にについて取り上げました。ですが、新幹線も素晴らしいことばかりではありません。今日はそのウィークポイントに触れていきたいと思います。

“中国の高速鉄道網は日本の新幹線の9倍の長さがあります”と以前にお話しました。実はそれに加えて、もうひとつ日本の新幹線を上回っていることがあります。“最高営業速度”です。現在の中国の高速鉄道の最高営業速度は“時速350㎞”と、世界で断トツで1位となっています。2011年温州での衝突脱線で多数の死者を出したあの事故の後は、“省エネ”“運賃抑制”という理由で“時速300㎞”に抑えられていました。衝突脱線で高架橋から落下し大破したため、当局がもう生存者はいないということでその場で事故車両を埋めちゃった…という世界が唖然としたあの有名な事故ですね。しかし、2017年には“時速350㎞運転”を再開していますから、再び世界1位になりました。
ひるがえって、日本の新幹線の最高速度はというと、早い順に、東北新幹線が“時速320㎞”、山陽新幹線は“時速300㎞”、東海道新幹線は“時速285㎞”、それ以外の北海道・九州・北陸新幹線は“時速260㎞”、そして、上越新幹線はなんと“時速240㎞”なんです。ボロ負けというほどではありませんが、やはり負けてしまっている感はありますね。「世界をリードしてきた日本の高速鉄道の技術は、歴史が20年もない中国にもう追い越されてしまったのか…」と思われるのは早合点です。その理由は簡単です。日本の新幹線は、国鉄時代の赤字経営や民間企業として利益を出さなければなりませんから、「経済性」「安全性」を重視しています。つまり、“経済的営業速度”という考えを基に、それぞれの路線の最高速度を設定しています。東北新幹線がわかりやすい例かと思います。1985年(昭和60年)の開業当時は“時速240㎞”、岩手県の盛岡まで延伸されたころにはE2系が導入され“時速275㎞”となりました。その後は “時速300㎞”、現在は“時速320㎞”に引き上げられました。距離が延びたり、飛行機から客を奪ったり、その時の置かれた状況によってスピードアップしてきました。札幌まで延伸された際には“時速360㎞”を想定しているようですね。実際に日本の新幹線の走行試験での最高速度は“時速443㎞”を達成していますが、騒音対策などを考えると今のところ“時速320㎞”が限界のようなのです。2030年(令和12年)の北海道新幹線の札幌延伸時には最高営業速度“時速360㎞”を目指して次世代新幹線を開発中、まだまだ新幹線の高速化からは目が離せないところです。

新幹線の高速化を阻む要因は、実は色々と複雑に絡み合っています。それについては、また特集したいと思っています。“最高営業速度”以外にも新幹線の弱点はありますので、次回以降もお話していきますね。

では、また!

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